発達障害のある子どもの中学進学ガイド｜勉強・生活環境の違いと準備のポイント

発達障害のある子どもにとって、小学校から中学校への進学は大きな環境の変化を伴います。
授業のスピードが早くなり、科目数も増え、部活動が始まるなど、新しい生活リズムに適応する必要があります。
しかし、事前に変化を理解し、適切な準備を進めることで、中学校生活をより充実したものにすることができます。

この記事では、発達障害のある中学生とその保護者の皆様に向けて、小学校と中学校の違い、起こりやすい困りごと、そして家庭でできる準備について詳しく解説します。
また、家庭教師がどのようなサポートを提供できるかについてもご紹介し、お子様が安心して中学校生活を送れるよう、実用的な情報をお伝えします。

小学校と中学校の勉強の違いを理解しよう

中学校への進学は、お子様にとって学習面で大きな変化の連続です。
まずは、小学校と中学校の勉強がどのように違うのかを具体的に理解しておくことが大切です。

授業スピードと科目数の増加

小学校では1人の担任の先生が主要科目を教えてくれましたが、中学校では各科目に専門の先生がつく教科担任制になります。
これにより、授業のスピードが格段に速くなります。

小学校で1週間かけて学んでいた内容を、中学校では2〜3日で進むことも珍しくありません。
特に数学では、小学校の算数と比べて抽象的な概念が多く登場し、一度理解が遅れると次の単元についていくのが困難になってしまいます。

科目数も大幅に増加します。
小学校では国語、算数、理科、社会が中心でしたが、中学校では英語が本格的に始まり、理科も物理・化学・生物・地学の分野に分かれます。
社会も地理・歴史・公民と専門性が高くなり、技術・家庭科、美術、音楽、保健体育も含めると、覚えるべき内容が飛躍的に増えます。

発達障害のあるお子様の中には、情報の整理や優先順位をつけることが苦手な場合があります。
そのため、多くの科目を同時に学習することに戸惑いを感じる可能性があります。

定期テストと通知表の仕組み

小学校では主に単元テストで評価されていましたが、中学校では定期テスト（中間テスト・期末テスト）が成績の大部分を占めます。
定期テストは複数の単元をまたいで出題されるため、広範囲の学習内容を体系的に理解し、記憶しておく必要があります。

通知表の評価方法も大きく変わります。
小学校では「よくできる」「できる」「がんばろう」といった3段階評価が一般的でしたが、中学校では5段階評価となり、高校受験にも影響するため、より客観的で厳格な評価が行われます。

定期テストでは、暗記だけでなく思考力や表現力を問う問題も多く出題されます。
例えば、理科では実験結果から考察を述べる問題、社会では資料を読み取って自分の意見を書く問題などが含まれます。
これらの問題は、発達障害のあるお子様が特に苦手とする分野の一つです。

テスト勉強の計画立てが重要

定期テストで良い結果を出すには、テストの2〜3週間前から計画的に勉強を進める必要があります。
各科目のテスト範囲を確認し、苦手分野を重点的に復習するなど、戦略的な学習が求められます。

宿題・提出物の管理の負担

中学校では宿題の量が大幅に増加し、提出期限の管理も複雑になります。
毎日複数の科目から宿題が出され、さらにワークブックやレポート、作品制作など、さまざまな形の課題が課されます。

小学校では「明日までに」という短期的な宿題が中心でしたが、中学校では「来週の金曜日まで」「2週間後のテスト当日まで」といった中長期的な課題も増えます。
これらの課題を適切に管理し、期限内に質の高い内容で提出するには、高度な時間管理能力と計画性が必要です。

発達障害のあるお子様の中には、見通しを立てることや複数のタスクを同時に管理することが困難な場合があります。
そのため、提出物の管理は特に注意深くサポートする必要がある分野です。

提出物の評価も成績に大きく影響します。
内容の質はもちろん、期限を守ること、指定された形式で作成することなども評価の対象となります。
提出が遅れたり、形式が間違っていたりすると、内容が良くても評価が下がってしまうことがあります。

生活環境の変化と適応のポイント

中学校生活では、勉強面だけでなく生活面でも大きな変化があります。
新しい環境に適応するためには、これらの変化を事前に理解しておくことが重要です。

部活動のスタートと時間の使い方

多くの中学校では部活動への参加が推奨され、放課後の時間の使い方が大きく変わります。
部活動は通常、平日は放課後から17時頃まで、土日も練習や試合があることが多く、自由時間が大幅に減少します。

部活動に参加することで、体力面での負担も増加します。
運動部はもちろん、文化部でも長時間の活動により疲労がたまりやすくなります。
発達障害のあるお子様の中には、疲労への耐性が低い場合があり、部活動後の家庭学習に影響が出ることもあります。

時間管理のスキルがより重要になります。
限られた時間の中で宿題を済ませ、定期テストの準備をし、睡眠時間も確保する必要があります。
これまで以上に効率的な学習方法を身につけることが求められます。

部活動選びのポイント

部活動を選ぶ際は、お子様の特性を考慮することが大切です。
集団での活動が苦手な場合は個人競技、体力面で不安がある場合は文化部など、無理のない選択をすることが継続につながります。

教科担任制と人間関係の広がり

中学校では教科担任制により、関わる大人の数が大幅に増えます。
各科目の先生、学年主任、生徒指導の先生、部活動の顧問など、さまざまな先生との関係を築く必要があります。

それぞれの先生には異なる指導方針や性格があり、コミュニケーションの取り方も変える必要があります。
ある先生には通じるやり方が、別の先生には通じないということも起こります。
発達障害のあるお子様にとって、このような関係性の複雑さは大きなストレスとなることがあります。

クラスメイトとの関係も変化します。
小学校よりも生徒数が多くなることが一般的で、さまざまな小学校出身の生徒が集まります。
新しい友人関係を築く機会がある一方で、人間関係のトラブルが起こる可能性も高くなります。

学校ルール・提出期限への対応

中学校では、小学校よりも厳格な校則が設けられていることが多く、服装や髪型、持ち物などに細かい規定があります。
これらのルールを理解し、日々守り続けることが求められます。

提出期限の管理も、より複雑で厳格になります。
複数の科目から同時に課題が出され、それぞれ異なる期限が設定されます。
期限を過ぎると減点や再提出が求められることもあり、成績に直接影響します。

校内での移動も増加します。
教科によって教室を移動したり、体育館や理科室など特別教室を使用したりする機会が多くなります。
時間割を確認し、必要な教材を準備して、決められた時間内に移動することが必要です。

発達障害のある子がつまずきやすい場面

発達障害のあるお子様が中学校生活で直面しやすい困りごとを、具体的な場面とともに見ていきましょう。
事前に把握しておくことで、適切な対策を立てることができます。

勉強での困難（板書・テスト・暗記など）

板書の困難

中学校の授業では、先生が黒板に書く内容をノートに写し取る板書が頻繁に行われます。
発達障害のあるお子様の中には、以下のような困難を抱える場合があります。

• 視覚的な情報処理の困難: 黒板の文字を正確に読み取ることが難しい
• 手と目の協調運動の困難: 黒板を見ながらノートに書き写すことができない
• 注意の分散: 先生の話を聞きながら同時に板書することができない
• 書字の困難: 文字を書くこと自体に時間がかかり、板書が追いつかない

具体例として、数学の授業で先生が「二次方程式 ax² + bx + c = 0 の解の公式は…」と説明しながら黒板に式を書いていく場面を考えてみましょう。
注意欠陥・多動性障害（ADHD）のあるお子様は、先生の説明に注意を向けているうちに板書が進んでしまい、ノートが空白のまま授業が終わってしまうことがあります。

テストでの困難

定期テストでは、限られた時間内で多くの問題を解く必要があります。
発達障害のあるお子様が直面する困難には以下があります。

• 時間配分の困難: どの問題にどれくらい時間をかけるべきか判断できない
• 問題文の理解の困難: 長い文章や複雑な条件を正確に理解できない
• 集中の持続の困難: 長時間のテストに集中し続けることができない
• 記述問題への対応の困難: 自分の考えを文章で表現することが苦手

例えば、理科のテストで「実験結果から分かることを、グラフの変化と関連付けて100字以内で説明しなさい」という問題が出たとします。
自閉症スペクトラム障害のあるお子様は、実験結果は理解できても、それを文章で表現することや、字数制限を守りながら要点をまとめることに大きな困難を感じる場合があります。

暗記の困難

中学校では暗記すべき内容が大幅に増加します。
英単語、漢字、歴史の年代、理科の用語など、膨大な量の情報を記憶する必要があります。

• 機械的暗記の困難: 意味のない文字列や数字の組み合わせを覚えることが苦手
• 長期記憶への定着の困難: 一時的に覚えても、時間が経つと忘れてしまう
• 情報の整理の困難: 似たような内容を区別して記憶することができない

生活面での課題（時間管理・忘れ物・体力面）

時間管理の困難

中学校生活では、より高度な時間管理能力が求められます。

朝の準備を例に挙げると、小学校時代は「8時に家を出る」という単純な目標でよかったのが、中学校では「7時に起床→7時10分に着替え→7時20分に朝食→7時40分に身支度→7時50分に家を出発→8時10分に学校到着」といった、より細かいスケジュール管理が必要になります。

ADHDのあるお子様は、このような時系列の管理や見積もりが苦手で、毎朝バタバタしてしまったり、遅刻を繰り返したりすることがあります。

忘れ物の増加

中学校では持参する物品が大幅に増加し、忘れ物をしやすくなります。

• 教科書・ノート: 時間割に応じて毎日異なる組み合わせ
• 副教材: ワークブック、資料集、辞書など
• 提出物: 宿題、レポート、作品など
• 部活動用品: ユニフォーム、道具、着替えなど

学習障害のあるお子様の中には、ワーキングメモリー（作業記憶）の容量が小さく、複数の情報を同時に保持することが困難な場合があります。
そのため、「明日は数学、理科、英語があるから、教科書と問題集とノートと辞書を持って行って、それと数学の宿題も忘れずに…」といった複雑な準備が非常に困難になります。

体力面での課題

中学校生活は小学校よりも体力的な負担が大きくなります。

• 授業時間の延長: 1コマ50分の授業が6時間
• 部活動による疲労: 平日2時間、土日も活動
• 通学距離の延長: 自転車通学や電車通学の場合も
• 睡眠時間の減少: 宿題や部活動により就寝時刻が遅くなる

発達障害のあるお子様の中には、感覚過敏により疲労しやすい場合があります。
騒がしい教室環境、蛍光灯の明かり、多くの人がいる空間などが刺激となり、定型発達のお子様よりも早く疲れてしまうことがあります。

対人関係での不安（友人関係・先生とのやりとり）

友人関係の複雑化

中学校では人間関係がより複雑になります。

• グループ形成: クラス内でのグループ分けや派閥の形成
• 異性への関心: 思春期に伴う異性への関心と戸惑い
• 競争関係: 成績や部活動での競争が激しくなる
• いじめリスクの増大: より陰湿で巧妙ないじめが発生しやすい

自閉症スペクトラム障害のあるお子様は、暗黙のルールや空気を読むことが苦手で、無意識のうちに相手を不快にさせてしまうことがあります。
例えば、友達が「今度の休み時間、一緒に図書館に行こうか」と言った際に、社交辞令であることが理解できず、本当に約束として受け取ってしまい、相手が来なかった時にトラブルになることがあります。

先生とのやりとりの困難

教科担任制により、さまざまな先生とコミュニケーションを取る必要があります。

• 指導スタイルの違い: 厳しい先生、優しい先生、それぞれへの対応
• 質問のタイミング: いつ、どのように質問すればよいか
• 注意を受けた時の対応: 適切な謝罪や改善の表明
• 相談事の伝え方: 困りごとをどう説明するか

例えば、ADHDのあるお子様が授業中に衝動的に発言してしまい、厳格な指導方針の先生から注意を受けた場合、パニックになってしまったり、反抗的な態度を取ってしまったりすることがあります。
これにより先生との関係が悪化し、さらに学校生活が困難になる悪循環が生まれることもあります。

中学進学に向けてできる準備

中学校への進学をスムーズにするために、小学校在学中から準備できることがあります。
段階的に取り組むことで、お子様の負担を軽減できます。

勉強習慣を少しずつ整える

学習時間の段階的延長

小学校では30分程度の家庭学習で十分だった場合でも、中学校では最低1〜2時間の学習時間が必要になります。
急に学習時間を延ばすのではなく、小学校6年生の間に段階的に増やしていきましょう。

具体的なステップとしては、以下のような進め方が効果的です：

1. 第1段階（小6の4〜6月）: 30分→45分に延長
2. 第2段階（小6の7〜9月）: 45分→60分に延長
3. 第3段階（小6の10〜12月）: 60分→75分に延長
4. 第4段階（小6の1〜3月）: 75分→90分に延長

学習内容も中学校を意識したものにシフトしていきます。
小学校の復習に加えて、中学校の予習内容を少しずつ取り入れることで、スムーズな移行が可能になります。

科目別学習法の確立

中学校では科目数が増えるため、それぞれの科目に適した学習方法を身につける必要があります。

• 国語: 文章読解力を向上させるため、毎日10〜15分の読書時間を設ける。新聞の社説や中学生向けの小説を読む習慣をつける。
• 数学: 小学校の算数の基礎を完全に定着させる。特に分数、小数、割合の計算は中学数学の土台となるため、確実に理解しておく。
• 英語: アルファベットの大文字・小文字を正確に書けるようにする。英語の音に慣れるため、英語の歌やアニメを聞く機会を増やす。
• 理科・社会: 暗記だけでなく、「なぜそうなるのか」を考える習慣をつける。図鑑や教育番組を活用し、知的好奇心を育てる。

生活リズムを中学校仕様にシフト

起床・就寝時刻の調整

中学校では授業開始時刻が早くなることが多く、通学時間も延びる傾向があります。
進学予定の中学校の時間割を確認し、必要に応じて起床時刻を早めていきましょう。

理想的な生活リズムの例：

• 起床: 6時30分（小学校時代より30分早く）
• 朝食: 7時00分
• 出発: 7時40分
• 帰宅: 18時00分（部活動を想定）
• 夕食: 18時30分
• 学習時間: 19時30分〜21時00分
• 就寝: 22時00分

この生活リズムを小学校6年生の後半から段階的に導入することで、中学進学時の負担を軽減できます。

持ち物管理システムの構築

中学校では持参する物品が大幅に増加するため、効果的な管理システムが必要です。

• 時間割チェック表の作成: 各曜日の時間割と必要な持ち物を一覧表にまとめ、毎日確認する習慣をつけます。
• 準備の習慣化: 翌日の準備を毎日同じ時刻（例：夕食後）に行う習慣を確立します。
• チェックリストの活用: 忘れ物をしやすいお子様には、視覚的なチェックリストを作成し、項目を一つずつ確認しながら準備を進めます。

支援体制の確認（合理的配慮・担任との連携）

合理的配慮の申請準備

発達障害のあるお子様が中学校で適切な教育を受けるためには、合理的配慮の申請が重要です。
小学校での支援内容を整理し、中学校でも継続が必要な配慮について具体的にまとめておきます。

合理的配慮の例：

• 学習面: 板書時間の延長、テスト時間の延長、問題用紙の拡大、別室受験
• 生活面: 座席位置の配慮、休憩時間の確保、感覚過敏への配慮
• 人間関係: コミュニケーション支援、トラブル発生時の介入

これらの配慮について、医師の意見書や小学校での実践記録を準備し、中学校入学前に相談することが重要です。

引き継ぎ資料の作成

小学校での支援内容や効果的だった指導方法について、詳細な引き継ぎ資料を作成します。
これにより、中学校の先生方がお子様の特性を理解し、適切な支援を提供しやすくなります。

引き継ぎ資料に含める内容：

• 診断名と特性の詳細
• 効果的だった指導方法
• 注意が必要な場面と対処法
• 保護者の連絡先と相談希望内容
• 本人の興味・関心事項

家庭教師ができるサポート

家庭教師は、発達障害のあるお子様が中学校生活に適応するために、さまざまな面からサポートを提供できます。
集団指導では対応が困難な個別のニーズに応じた指導が可能です。

授業スピードへのフォローアップ

中学校の授業は小学校よりもスピードが速く、一度理解が遅れると追いつくのが困難になります。
家庭教師による個別指導では、お子様のペースに合わせて丁寧に説明し、確実に理解を積み重ねることができます。

予習型指導の実施

中学校の授業内容を事前に学習することで、学校の授業を「復習」として位置づけることができます。
これにより、授業中の理解度が向上し、自信を持って参加できるようになります。

具体的な予習指導の例：

• 数学: 新しい単元の基本概念を分かりやすく説明し、基礎問題を反復練習
• 英語: 新出単語の意味と発音を確認し、基本文法を段階的に指導
• 理科: 実験の原理を事前に理解し、結果の予測と考察の練習
• 社会: 地図や年表を使った視覚的な説明で、歴史の流れを理解

復習型指導による定着

学校で学んだ内容が十分に理解できていない場合は、家庭教師による復習指導で確実な定着を図ります。
お子様の理解度に応じて、基礎レベルから応用レベルまで段階的に指導を進めます。

定期テスト対策の個別対応

中学校の定期テストは、小学校の単元テストよりも広範囲で複雑な内容が出題されます。
家庭教師による個別の定期テスト対策により、効率的な学習で高得点を目指すことができます。

個別学習計画の作成

お子様の学習状況と定期テストの出題範囲を分析し、最も効果的な学習計画を作成します。
苦手分野を重点的に学習し、得意分野でしっかりと得点を稼ぐ戦略を立てます。

テスト3週間前からの学習計画例：

期間	学習内容	重点科目
3週間前	全範囲の基礎確認	苦手科目の基礎固め
2週間前	応用問題への対応	得点源となる科目の強化
1週間前	総仕上げと弱点克服	全科目のバランス調整

記述問題対策の強化

中学校のテストでは、記述問題の比重が大きくなります。
発達障害のあるお子様が苦手とすることが多い記述問題について、段階的な指導により確実な得点力を身につけます。

記述問題対策の手順：

1. 問題文の読み取り方: キーワードに線を引き、何を問われているかを明確化
2. 答案の構成方法: 結論→理由→具体例の順序で文章を組み立てる
3. 字数制限への対応: 要点を整理し、制限字数内で簡潔に表現する技術
4. 模範解答の分析: 高得点答案の特徴を理解し、同様の表現技術を習得

学習と生活をつなげるサポート

家庭教師は学習指導だけでなく、学習習慣の確立や生活面での困りごとについてもサポートを提供できます。

宿題・提出物の管理支援

中学校では複数の科目から同時に宿題や課題が出されるため、適切な管理が重要になります。
家庭教師が管理方法を指導し、お子様が自立して取り組めるよう支援します。

管理ツールの活用例：

• 宿題管理表: 科目別・締切日別に整理した一覧表
• 学習カレンダー: 月間・週間の学習予定を視覚化
• チェックリスト: 日々の学習内容を確認するためのリスト

学習環境の最適化

発達障害のあるお子様にとって、学習環境の調整は学習効果に大きく影響します。
家庭教師がお子様の特性に応じて、最適な学習環境をアドバイスします。

環境調整の例：

• 集中しやすい座席配置: 気が散りやすい要素を排除した配置
• 時間管理ツール: タイマーやスケジュール表の効果的な活用
• 教材の整理: 使いやすい教材配置と整理システム
• 休憩の取り方: 集中力の持続に応じた適切な休憩間隔

保護者が意識したい心構え

発達障害のあるお子様の中学校進学において、保護者の理解とサポートは非常に重要な役割を果たします。
環境の変化に戸惑うお子様を支えるために、保護者として心がけたい姿勢について詳しく解説します。

子どもの不安を受け止める姿勢

中学校進学は、発達障害のあるお子様にとって大きなストレスとなります。
新しい環境への不安、学習面での心配、人間関係への恐れなど、さまざまな感情を抱えています。
保護者は、これらの不安を否定せず、共感的に受け止めることが重要です。

不安の表現を理解する

発達障害のあるお子様は、不安を言葉で適切に表現することが困難な場合があります。
以下のような行動や変化に注意を払いましょう。

• 身体症状: 頭痛、腹痛、不眠などの体調不良
• 行動の変化: 普段より話さなくなる、イライラしやすくなる
• 学習への抵抗: 宿題を嫌がる、勉強に集中できない
• 退行行動: 以前できていたことができなくなる

これらのサインを見逃さず、お子様の心の状態を理解しようとする姿勢が大切です。

共感的な対応の仕方

お子様が不安を表現した際は、まず共感を示すことから始めましょう。

避けたい対応：

• 「そんなことで心配する必要はない」
• 「みんな同じように頑張っている」
• 「気にしすぎだよ」

望ましい対応：

• 「中学校のことを考えると不安になるんだね」
• 「新しい環境って心配になるよね」
• 「どんなことが一番気になるか教えてくれる？」

共感を示した上で、具体的な不安の内容を聞き取り、一つずつ解決策を一緒に考えていきます。

安心感を提供する工夫

不安を感じているお子様に安心感を提供するために、以下のような工夫が効果的です。

• 見通しを立てる: 中学校生活の具体的なイメージを共有する
• 成功体験を思い出す: 過去に困難を乗り越えた経験を振り返る
• サポート体制を確認する: 家族、学校、家庭教師などのサポートがあることを伝える
• 小さな目標設定: 「まずは1週間頑張ってみよう」など、達成しやすい目標を設定する

学校・家庭教師・支援機関との連携

お子様の成長を支えるためには、関わる大人同士の連携が不可欠です。
情報共有と連携により、一貫した支援を提供することができます。

学校との効果的な連携方法

中学校の先生方と良好な関係を築き、お子様の特性を理解してもらうことが重要です。

初回面談で伝える内容：

• お子様の診断名と主な特性
• 効果的だった指導方法や配慮
• 注意が必要な場面と対処法
• 家庭での様子や変化
• 保護者の連絡希望や相談内容

継続的な情報共有：

• 定期的な面談の実施（月1回程度）
• 連絡帳やメールでの日常的なやり取り
• 学校行事での様子の確認
• 問題が発生した際の迅速な対応

家庭教師との連携体制

家庭教師と学校、そして家庭の間で情報を共有することで、より効果的な指導が可能になります。

家庭教師との情報共有内容：

• 学校での学習進度と理解状況
• 定期テストの結果と分析
• 宿題や提出物の取り組み状況
• 学校生活での困りごとや変化
• 家庭での学習習慣の様子

三者連携会議の実施： 定期的に保護者・学校・家庭教師の三者で情報共有の場を設けることで、お子様の状況を多角的に把握し、最適なサポート方法を検討できます。

支援機関との協力

医療機関、療育センター、教育相談室などの専門機関との連携も継続して行います。

医療機関との連携：

• 定期的な受診による状況の確認
• 薬物療法が必要な場合の調整
• 学校生活での困りごとの相談
• 診断書や意見書の作成依頼

療育機関との連携：

• 社会スキル練習の継続
• 学習方法の相談とアドバイス
• 同じ悩みを持つ家族との情報交換
• 進路に関する情報収集

「できること」を積み重ねて自信を育てる

発達障害のあるお子様は、苦手なことや困難な場面に注目が集まりがちですが、「できること」に焦点を当てて自信を育てることが重要です。

小さな成長を見逃さない

日常生活の中で、お子様の小さな成長や頑張りを見つけて認めることが、自信につながります。

認められると嬉しい成長の例：

• 宿題を自分から始めることができた
• 忘れ物をせずに学校に行くことができた
• 友達と楽しく話をすることができた
• 新しいことに興味を示すことができた
• 困った時に「助けて」と言うことができた

これらの小さな成長を見つけた時は、具体的に褒めることが重要です。

「今日は自分から宿題を始めたね。計画的に取り組めるようになってきたね」

というように、何ができたかを明確に伝えます。

得意分野を伸ばす機会の提供

お子様の興味や得意分野を見つけ、それを伸ばす機会を積極的に提供します。
得意分野での成功体験は、他の分野への意欲にもつながります。

得意分野の活用例：

• 絵が得意な場合：学習ノートに図やイラストを描いて理解を深める
• 数字に強い場合：統計や計算を活用した学習方法を取り入れる
• 記憶力がある場合：暗記科目を得点源として活用する
• 細かい作業が得意な場合：丁寧なノート作りや作品制作で評価を得る

努力の過程を評価する

結果だけでなく、努力の過程を評価することで、お子様の意欲を維持できます。

過程重視の評価例：

• 「テストの点数は思うようにいかなかったけど、毎日コツコツ勉強を続けたことがすばらしいね」
• 「まだ完璧ではないけど、自分で時間割を確認する習慣がついてきたね」
• 「友達とのトラブルがあったけど、自分から謝ることができたのは成長だね」

このような声かけにより、お子様は「結果が完璧でなくても、努力することに意味がある」ということを理解し、継続的な取り組みへの意欲を維持できます。

将来への希望を持たせる

中学校生活の困難な面ばかりに目を向けるのではなく、将来への希望や可能性について話し合うことも大切です。

将来の可能性について話し合う内容：

• 興味のある分野での進路の可能性
• 社会で活躍している発達障害のある人たちの事例
• 中学校、高校、その先の学習や成長の見通し
• 自分らしい生き方や働き方の選択肢

これらの話し合いを通じて、お子様が「今の困難は一時的なもので、きっと自分なりの道を見つけられる」という希望を持てるよう支援します。

まとめ

発達障害のあるお子様の中学校進学は、確かに多くの変化と新たな困難を伴います。
授業スピードの加速、科目数の増加、定期テストや部活動の始まり、より複雑な人間関係など、適応すべき要素は数多くあります。
しかし、これらの変化を事前に理解し、適切な準備を行うことで、お子様の負担を大幅に軽減することが可能です。

重要なのは、お子様一人ひとりの特性を理解し、その子に合ったサポート方法を見つけることです。
板書が苦手な場合は代替手段を用意し、時間管理が困難な場合は視覚的なツールを活用し、対人関係で不安を感じる場合は安心できる環境を整えるなど、個別のニーズに応じた配慮が効果的です。
また、家庭教師による個別指導は、集団指導では対応が困難な細かなニーズに応えることができ、お子様のペースに合わせた学習支援を提供できます。

保護者の皆様には、お子様の不安に共感し、小さな成長を認め、関係機関と連携しながら、お子様の「できること」を積み重ねていくことをお勧めします。
発達障害があっても、適切なサポートがあれば、中学校生活を充実させることは十分に可能です。

お子様の可能性を信じ、一歩ずつ着実に進んでいけば、必ず明るい未来が開けるでしょう。
中学進学は新たなスタートラインです。
焦らず、お子様のペースを大切にしながら、親子で一緒にこの大切な時期を乗り越えていきましょう。