5月に増える登校のつらさ | 発達障害のある子が無理なく過ごすために

5月に増える登校のつらさ | 発達障害のある子が無理なく過ごすために
公開日:
Xでシェア facebookでシェア LINEでシェア

新学期が始まって約1か月。
ゴールデンウィークが明ける5月は、新しい環境への適応に使ったエネルギーが尽き、心身の疲れが一気に表れやすい時期です。
特に発達障害のあるお子さんは、日々の変化に対応するために多くの力を使っており、「登校はできているけれど、心の疲れがたまっている」という状態に陥ることも少なくありません。

一方で、周囲からは「もう1か月たったのだから、そろそろ慣れたよね?」という空気が漂い始める時期でもあります。
しかし、発達障害のあるお子さんにとっては、環境への適応に「時間」が解決してくれるとは限りません。
適応の進み方やエネルギーの消耗具合は、支援のあり方によって大きく変わってくるとされています。
こうした背景から、5月は「がんばりの限界」が見えやすくなる「心と体の疲労期」にあたると言えるでしょう。

この記事では、発達障害のあるお子さんが5月に抱えやすい困難とその背景、そしてご家庭でできるサポートや学校との連携のコツをご紹介します。
「なんとなくいつもと違う」「頑張っているのに元気がない」――そんな小さなサインを見逃さず、お子さんの心のSOSに気づくためのヒントをお伝えしていきます。

発達障害・グレーゾーン専門の
オンライン家庭教師のソウガク

発達障害・グレーゾーンのお子様の特性を理解しながら、スモールステップで自信をつけるオンライン家庭教師のソウガク。
お子様一人ひとりに合わせた学習・サポートプログラムをご用意しています。

ソウガクでは、発達障害に関する専門機関が授業をサポートし、適正な授業運営と教材の提案提供を行い、究極の個別対応を実施しています。

ソウガクを詳しく知りたい方はこちら

新学年スタートから1か月 見えてくる「心の疲れ」と「がんばりの限界」

新学年スタートから1か月 見えてくる「心の疲れ」と「がんばりの限界」

4月は気を張ってがんばっていた子が、5月に不調を見せ始める理由

4月から始まる新しい環境に対して、多くの子どもたちが「がんばらなくては」という気持ちで臨んでいることでしょう。
発達障害のあるお子さんも同様に、新しい教室、新しい先生、新しいクラスメイトという変化の中で、自分を精一杯適応させようと無意識のうちに緊張状態を続けています。

この「気を張った状態」は実は大きなエネルギー消費を伴います。
特に自閉スペクトラム症のあるお子さんは、社会的コミュニケーションに通常より多くのエネルギーを必要とするため、新しい人間関係の構築には大きな労力が必要です。
また、ADHDのあるお子さんは、新しい環境で求められるルールや手順を覚え、それに従おうと集中力を使い続けることになります。

このような状態が1か月ほど続くと、徐々に心身のエネルギー貯蓄が底をつき始め、5月になって急に疲労感が表面化することがあります。
これは「頑張りの限界」が来た証拠であり、決して「怠けている」わけではありません。

「もう慣れたよね?」という空気がプレッシャーになることも

5月に入ると、周囲からは「もう1か月経ったから慣れたよね?」という期待や空気が漂いがちです。
教師や保護者も無意識のうちに「そろそろ大丈夫だろう」と考え、サポートの手を緩めることがあります。

しかし発達障害のあるお子さんにとって、環境への適応は単なる時間経過では解決しない場合が多くあります。

例えば、

  • 感覚過敏がある子どもにとって、教室の音や光、人の多さによる刺激は、時間が経っても「慣れる」ものではなく、むしろ蓄積されて負担が増すこともあります
  • 実行機能に課題がある子どもは、一度覚えた手順でも、安定して実行できるようになるまでに時間がかかります
  • 新しい社会的スキルを身につけるプロセスは、定型発達の子どもに比べて時間がかかることがあります

このような状況で「もう慣れたよね?」という周囲の期待は、本人にとって大きなプレッシャーとなり、さらなるストレスの原因になってしまいます。

「ちょっと元気がないかも…」と感じたときに確認したいポイント

お子さんの様子がいつもと違うと感じたら、次のようなポイントに注目してみましょう:

身体面のサイン

  • 疲れやすい、朝起きるのが特に大変になった
  • 頭痛や腹痛、吐き気などの身体症状が現れる
  • 食欲の変化(極端に増える、または減る)
  • 睡眠の質の低下(寝つきが悪い、夜中に何度も起きる)

行動面のサイン

  • これまで好きだった活動への関心が薄れる
  • イライラしやすい、感情の起伏が大きくなる
  • 以前はできていた課題が急にできなくなる
  • 独り言や繰り返し行動が増える(ASDの特性がより目立つ)
  • 不注意やケアレスミスが増える(ADHDの特性がより目立つ)

コミュニケーション面のサイン

  • 「疲れた」「だるい」という言葉が増える
  • 学校での出来事を話さなくなる
  • 質問に対して「わからない」という返答が増える
  • 会話が一方的になる、または極端に少なくなる

これらのサインが複数見られる場合は、お子さんが心身の疲労やストレスを抱えている可能性があります。
早めに休息の機会を設けるなど、対応を検討しましょう。

「毎日行けてるけど、つらい」― 表に出にくい5月のしんどさ

「毎日行けてるけど、つらい」― 表に出にくい5月のしんどさ

登校している=安心とは限らない

多くの保護者や教師は、「毎日学校に行けている」ことを成功の指標と考えがちです。
確かに登校できることは大切ですが、その内実に目を向けることも重要です。

発達障害のあるお子さんの中には、「学校に行かなければならない」という強い責任感や、「休むと迷惑をかける」という過剰な義務感から、無理をして登校を続けているケースがあります。
特に真面目な性格のお子さんは、自分の限界を超えても頑張り続けることがあります。

また、不安や緊張が高まっていても、それを言葉で表現するのが難しく、周囲に気づかれにくい場合もあります。
例えば、自閉スペクトラム症のあるお子さんは、自分の感情状態を認識し言語化することに困難を感じることがあります。

隠れたサインを見逃さないために

  • 朝の準備が極端に遅くなる、または涙ぐみながら準備する
  • 学校の話題を避ける、または「大丈夫」と繰り返し言う
  • 学校の帰り道で急に元気がなくなる
  • 週末になると体調が良くなり、日曜の夕方から再び悪化する

こうしたサインが見られるときは、表面上は問題なく見えても、内面では大きな負担を抱えている可能性があります。

学校ではがんばれているけど、家で崩れる子もいる

発達障害のあるお子さんの中には、学校では周囲に合わせて精一杯振る舞い、家に帰ってから感情や疲れが爆発するケースがよく見られます。
その場では自分の気持ちを抑え込んで頑張っていても、あとから一気にしんどさが出てしまう。
そうした傾向のある子は、「気持ちをため込みやすい子」や「感情があとからあふれてくるタイプ」とも言われています。

学校という公の場では、「普通」に振る舞おうと必死になり、自分の感情を我慢し続けます。
その結果、安心できる家庭という場に戻ったとたん、それまで溜め込んでいた緊張やストレスが一気に表に出てしまうのです。

家庭での崩れ方の例

  • 帰宅後すぐに激しい癇癪やパニックを起こす
  • 極端な疲労感で動けなくなる、または昼寝が異常に長くなる
  • 家族に対して攻撃的な言動が増える
  • 学校では見せない強いこだわりや常同行動が出現する
  • 自室に閉じこもり、家族とのコミュニケーションを拒む

この現象は、お子さんが「安全基地」である家庭で本来の自分を出せている証拠でもあります。
しかし、家族にとっては対応が難しく、「なぜ学校ではできるのに家ではできないのか」と疑問に思うことも少なくありません。

重要なのは、これを「わがまま」と誤解せず、お子さんが学校でどれだけのエネルギーを使っているかを理解することです。
家庭は感情を安全に解放できる場所として機能しているのです。

「疲れた」「行きたくない」への声かけで気をつけたいこと

お子さんが「学校に行きたくない」「疲れた」と訴えたとき、その対応は非常に重要となります。
この時期の適切な声かけが、問題の早期解決や悪化防止につながります。

避けたい声かけ

  • 「みんな同じように頑張っているんだよ」→ 他者との比較は無意味な場合が多い
  • 「もう1か月経ったんだから慣れなきゃ」→ 適応に時間がかかることを理解していない
  • 「気にしすぎだよ」「大げさだよ」→ 本人の感じている困難を否定している
  • 「休むと余計に行きづらくなるよ」→ 必要な休息を妨げる可能性がある

効果的な声かけ

  • 「どんなところが疲れる?」→ 具体的な困難を把握できる
  • 「今日はどんな気持ち?」→ 感情を言語化する機会を提供
  • 「〇〇くんのペースでいいんだよ」→ 個人差を尊重している
  • 「休めるときにしっかり休もうね」→ 休息の重要性を認めている

声かけの基本は、お子さんの感じていることを否定せず、まずは受け止めることです。
その上で、具体的な対策を一緒に考えていくアプローチが効果的です。
たとえ毎日登校できていても、その内実に目を向け、お子さんの声に耳を傾けることが大切です。

「学校の環境変化」がつらい子への気づきとサポート

「学校の環境変化」がつらい子への気づきとサポート

担任交代やクラス替えが不安になる子もいる

新学年では担任の先生が変わったり、クラス替えが行われたりします。
多くの子どもたちにとって、これは新鮮な経験である一方、発達障害のあるお子さんにとっては大きな不安源となることがあります。

特に自閉スペクトラム症のあるお子さんは、予測可能性や一貫性を重視する特性があるため、人間関係の変化に強いストレスを感じることがあります。
以前の担任との関係構築に時間と労力をかけてきたのに、また一からやり直さなければならないという負担は想像以上に大きいものです。

具体的な困難の例

  • 新しい先生の指示の出し方や言葉遣いに慣れるのに時間がかかる
  • 先生の「怒っている顔」と「真剣な顔」の区別がつかず、常に緊張している
  • クラスメイトとの新しい人間関係の構築にエネルギーを使い果たす
  • 休み時間に誰と過ごせばいいのか分からず不安になる

こうした不安は4月当初は気を張って乗り越えていても、5月になって表面化することがあります。

有効なサポート

  • 新しい担任の先生との個別面談の機会を設ける
  • 担任の先生に、お子さんの特性や前年度の効果的だった支援について情報共有する
  • クラスの中に「安心できる味方」を一人見つけられるよう支援する
  • 休み時間の過ごし方について具体的な選択肢を提示する

教室の場所や座席の変化で戸惑うことがある

発達障害のあるお子さん、特に自閉症スペクトラム症や感覚過敏のあるお子さんにとって、物理的環境の変化は想像以上の影響を与えることがあります。

教室の場所による影響

  • 階が変わることで、トイレや水飲み場への行き方が分からなくなる
  • 教室の位置が廊下の端から中央に変わり、人通りの多さに不安を感じる
  • 特別教室(音楽室、図工室など)への行き方が変わり、迷子になる不安がある
  • 窓の向きが変わることで、日光の入り方や温度感が違って感じる

座席の位置による影響

  • 後ろの席になり、黒板が見えにくくなった(視覚的情報処理の困難)
  • 前の席になり、後ろから見られている感覚に不安を感じる
  • 窓際の席で外からの刺激(音、光)が気になって集中できない
  • エアコンや扇風機の真下の席で、風の感覚が苦手で落ち着かない

こうした環境要因は、一見些細に思えるかもしれませんが、感覚過敏のあるお子さんにとっては学習への集中を妨げる大きな障壁となることがあります。

有効なサポート

  • 学校に事前に座席の配慮をお願いする(例:窓から離れた席、前から2列目など)
  • 教室内の移動経路や特別教室への行き方を視覚的に示した地図を作成する
  • 必要に応じてイヤーマフやサングラス等の感覚調整グッズの使用を検討する
  • 席替えがある場合は事前に知らせてもらえるよう担任に依頼する

時間割・当番・係など、「いつもと違う」が負担になるケース

発達障害のあるお子さんにとって、予測可能性は安心感の源です。
しかし学校生活にはさまざまな「変化」や「例外」が存在します。

時間割の変更による影響

  • 急な時間割変更で準備していた教科書が違ってしまう
  • 普段と違う順序で授業が行われることによる混乱
  • 特別行事(遠足、運動会の練習など)への切り替えの難しさ
  • 5月は行事が多く、通常の時間割が実施される日が少ないことによる疲労

当番・係活動による負担

  • 新しい当番の仕事内容を覚えるのに時間がかかる
  • 複数の手順を含む係活動(例:給食当番)の実行が難しい
  • 「いつ」「何を」すればいいのかが明確でないことによる不安
  • 当番表を見て自分の担当日を把握することの難しさ

こうした「いつもと違う」状況への対応は、実行機能に課題を抱える発達障害のあるお子さんにとって大きなエネルギーを必要とします。
特にADHDのあるお子さんは、計画の変更に対応する柔軟性や、複数の指示を記憶して実行する能力に課題があることが多いため、これらの変化に強いストレスを感じることがあります。

有効なサポート

  • 翌日の時間割や持ち物を確認する習慣をつける(家庭と学校の連携)
  • 当番や係の手順を視覚的に示したチェックリストを作成する
  • カレンダーに学校行事や当番の日をマークして視覚的に把握できるようにする
  • 急な変更があった場合の対処法(誰に聞けばいいか、どうすればいいか)を事前に決めておく

5月は生活リズムと「安心感の土台」を整え直すタイミング

5月は生活リズムと「安心感の土台」を整え直すタイミング

GW明けで乱れがちな生活リズムを立て直すコツ

ゴールデンウィークという長期休暇を経て、多くの子どもたちの生活リズムは乱れがちになります。
特に発達障害のあるお子さんは、環境の変化への適応に時間がかかるため、休暇後の生活リズムの立て直しに苦労することが少なくありません。

生活リズムが乱れた際によく見られる状態

  • 夜更かしが習慣化し、朝起きるのが極端に困難になる
  • 食事の時間が不規則になり、栄養バランスも崩れがち
  • 運動不足による体力低下や、気分の落ち込み
  • スマホやゲームの使用時間が増え、依存気味になる

これらの状態は、脳の覚醒システムや体内時計に影響を与え、学習への集中力や情緒の安定にも影響します。

生活リズムを整えるコツ

  • 段階的に調整する:一気に早寝早起きに戻そうとせず、15〜30分ずつ就寝・起床時間を調整する
  • 朝日を浴びる:起きたらすぐにカーテンを開け、朝日を浴びることで体内時計をリセット
  • 夕方以降の活動を工夫する:夕食後は穏やかな活動に切り替え、ブルーライトを発する機器の使用を控える
  • 固定された食事時間:食事の時間を一定にすることで、体内リズムを整える
  • 視覚的なスケジュール:朝・昼・夜のルーティンを視覚化し、自分で確認できるようにする

「明日は何があるか」が見えると気持ちが落ち着く

発達障害のあるお子さん、特に自閉スペクトラム症のあるお子さんは、先の見通しがあることで安心感を得ることができます。
「明日何が起こるか分からない」という不確実性は強い不安を引き起こすことがあります。

見通しが持てないことで生じる問題

  • 漠然とした不安から夜眠れなくなる
  • 「明日は何があるんだっけ?」と何度も確認する
  • 朝になって準備に手間取り、登校渋りにつながる
  • 想定外の出来事に対して過剰に反応する(パニックになる)

見通しを持たせるための工夫

  • 翌日の予定を視覚化する:カレンダーや予定表を活用し、特別な予定(体育や図工など持ち物が特別に必要な日)を色分けする
  • 週間予定表を作成する:一週間の流れが見える表を作り、学校の時間割を含めた予定を書き込む
  • 前日の準備を習慣化する:翌日の持ち物や服装を前日に確認し準備しておく
  • 変更の可能性を伝える:「明日は〇〇の予定だけど、変わるかもしれないね」と柔軟性も育てる
  • 写真や絵を活用する:文字の理解が難しいお子さんには、写真やイラストで予定を示す

こうした「見通し」は、お子さんの不安を軽減し、自律性を育むことにもつながります。

家の中に「安心して気を抜ける」場所や時間をつくろう

学校生活では常に緊張感を持って過ごしている発達障害のあるお子さんにとって、家庭は「安全基地」として機能することが重要です。
特に5月の疲れが出やすい時期には、心身をリセットできる場所や時間を意識的に設けることが大切です。

安心できる場所の特徴

  • 感覚刺激が少ない:騒音や強い光、匂いなどの刺激が制限されている
  • 予測可能性が高い:突然の変化や予期せぬ介入が少ない
  • 自分の好きなものに囲まれている:特別な関心事に関連するアイテムやお気に入りのものがある
  • 人間関係のプレッシャーがない:常に会話や適切な反応を求められることがない

具体的な取り組み例

  • 落ち着きのある空間を作る:部屋の一角にクッションや毛布を置き、リラックスできる空間を用意する
  • 帰宅後は「感覚をリセットする時間」を大切にする:帰宅後30分は質問や会話を控え、お子さんが自分のペースで過ごせる時間を確保する
  • 好きなことに夢中になれる時間を一緒に楽しむ:お子さんの特別な興味(恐竜、電車、アニメなど)に関する活動を一緒に楽しむ時間を作る
  • 体を動かす時間と静かに過ごす時間のどちらも大事にする:お子さんの感じ方の特徴に合わせて、適度な運動と静かな活動を取り入れる
  • 視覚で確認できるタイマーで安心感を持つ:「あと何分でこの活動が終わる」という見通しを持たせる

家庭が本当の意味での「安全基地」となることで、お子さんは学校でのストレスから回復し、翌日に向けてエネルギーを蓄えることができます。

支援の見直しはこの時期がベストタイミング

支援の見直しはこの時期がベストタイミング

4月に立てた支援が今の状態に合っているか確認する

新学年が始まる4月、多くの場合は前年度の情報を基に支援計画が立てられます。
しかし、お子さんの成長や新しい環境での様子を見て、5月はその支援内容を見直す絶好のタイミングです。

チェックしたいポイント

  • 学習面の支援:教科書の読み上げ、問題のサイズ調整、別室での試験などの配慮は適切か
  • 感覚面の支援:座席の位置、教室の音・光環境、イヤーマフなどの使用は効果的か
  • 社会面の支援:休み時間の過ごし方、グループ活動への参加方法は適切か
  • 行動面の支援:気持ちの切り替え支援は機能しているか
  • コミュニケーション面の支援:指示の出し方、質問の仕方などは本人に合っているか

この見直しは、お子さん自身の声を聞きながら行うことが理想的です。
「この支援は役に立っている?」「学校でどんなときに困る?」といった質問を通して、お子さん自身の気づきを引き出すことも大切です。

支援見直しの進め方

  1. 現在の状況(良くなっている点、課題がある点)を整理する
  2. お子さん自身の意見を聞く(年齢や理解度に応じて)
  3. 担任の先生と情報交換をする
  4. 必要に応じて専門家(特別支援コーディネーター、スクールカウンセラーなど)に相談する
  5. 具体的な支援内容を調整し、文書化する
  6. 実施後の効果を定期的に確認する

「慣れるスピード」は子どもによって違っていい

発達障害のあるお子さんの「環境への適応スピード」は、定型発達のお子さんと比べて異なる場合が多く、また発達障害のあるお子さん同士でも個人差が大きいものです。
この個人差を尊重し、お子さん固有のペースで適応できるよう支援することが重要です。

適応のプロセスが異なる理由

  • 感覚過敏 : 新しい感覚情報(音、光、匂いなど)への慣れには個人差がある
  • 予定変更などの対応能力:計画の立案、記憶の保持、注意の切り替えなどの能力には個人差がある
  • 不安の程度と対処能力:新しい状況に対する不安の強さや、それに対処する能力には差がある
  • 過去の経験:過去のトラウマ的経験が適応プロセスに影響することがある

子どものペースを尊重するための考え方

  • 比較を避ける:「他の子は既にできているのに」という比較は有害
  • 小さな進歩を認める:一見小さな変化でも、本人にとっては大きな一歩かもしれない
  • 「まだ」という言葉を使う:「できない」ではなく「まだできていない」と捉える
  • 個別の目標設定:クラス全体の目標ではなく、そのお子さん固有の目標を設定する
  • 段階的なステップアップ:一気に全てを求めるのではなく、小さな目標を積み重ねる

「慣れるスピード」や「適応のプロセス」に関して、お子さん自身が自己否定感を持たないよう配慮することも重要です。
「あなたのペースでいいんだよ」というメッセージを繰り返し伝えることで、お子さんの自己肯定感を守りましょう。

「このままで大丈夫かな?」と思ったときの相談先と伝え方

お子さんの様子に違和感を感じたとき、早めに適切な相談先に連絡することが問題の悪化を防ぐ鍵となります。しかし、「どこに」「どのように」相談すればよいのか悩む保護者も少なくありません。

主な相談先とその特徴

  • 学級担任:日常的な学校生活の様子を直接把握している
  • 特別支援コーディネーター:学校内での支援体制の調整役
  • スクールカウンセラー:心理面でのサポートや客観的なアドバイスが得られる
  • 発達支援センター:専門的な発達評価や支援方法のアドバイスが受けられる
  • 主治医・かかりつけ医:医学的な視点からのアドバイスや、必要に応じた投薬調整
  • 放課後等デイサービス:利用している場合は、学校外での様子を共有できる

効果的な相談の方法

  • 客観的事実を中心に伝える:「〇月〇日から、朝の準備に従来の倍の時間がかかるようになった」など具体的に
  • 比較情報を提供する:「4月に比べて夜泣きの頻度が週1回から毎日になった」といった変化を伝える
  • 家庭と学校での違いを明確にする:「学校では落ち着いて過ごせているようですが、帰宅後に毎日1時間以上泣き続ける」など
  • お子さんの言葉をそのまま伝える:「『教室の音が頭に刺さる』と言っている」など本人の表現をそのまま使う
  • 伝えるタイミングを工夫する:緊急でない場合は、面談の時間を設定してもらう

相談する際には、「批判」ではなく「協力を求める」姿勢が重要です。「こうすべきだ」という主張ではなく、「このような状況で、どのような支援が可能でしょうか」という質問形式にすることで、建設的な話し合いにつながります。

また、相談内容を箇条書きにしたメモを準備しておくと、感情的になりがちな話し合いでも要点を伝え忘れることを防げます。特に学校との連携では、「連絡ノート」を活用して日々の小さな変化を記録し共有することも有効です。

緊急性の判断基準

以下のような兆候が見られる場合は、より迅速な対応を検討しましょう:

  • 自傷行為や攻撃的行動が見られる
  • 食事や睡眠が極端に乱れている(2週間以上継続)
  • 「死にたい」「消えたい」などの言葉を口にする
  • 学校への恐怖や拒否が急激に強まる
  • 身体症状(頭痛、腹痛、嘔吐など)が頻繁に現れる

こうした緊急性の高いケースでは、スクールカウンセラーや医療機関への相談を優先し、必要に応じて一時的な休養も検討すべきです。お子さんの心身の健康を第一に考え、無理をさせないことが長期的には最良の選択となることが多いからです。

まとめ

5月という時期は、発達障害のあるお子さんにとって4月の緊張と努力の蓄積が表面化する季節です。
「毎日登校できているから大丈夫」という表面的な評価ではなく、お子さんの微細な変化に気づき、心身の疲労のサインを見逃さないことが重要です。
新しい環境への適応は一朝一夕に完了するものではなく、特に発達障害のあるお子さんは独自のペースで慣れていくプロセスを尊重する必要があります。

この時期には、生活リズムの立て直しと見通しの確保を通じて、お子さんの安心感を支える基盤作りに注力しましょう。
家庭が真の「安全基地」として機能することで、学校での緊張からの回復が促され、持続可能な学校生活が可能になります。
また、4月当初に立てた支援計画は、この時期に一度立ち止まって見直すことで、より効果的な支援につながります。

「この子のペースでいい」という視点をベースに、お子さんのありのままを受け止める姿勢こそが、5月の疲れを乗り越える鍵となります。
発達障害のあるお子さんにとって、「慣れる」ということは単に時間の問題ではなく、適切な理解と支援があってこそ実現するものです。
焦らず、比べず、お子さん自身の小さな進歩に目を向け、共に喜ぶことができれば、この時期の困難は必ず乗り越えられるでしょう。

発達障害・グレーゾーン専門の
オンライン家庭教師のソウガク

発達障害・グレーゾーンのお子様の特性を理解しながら、スモールステップで自信をつけるオンライン家庭教師のソウガク。
お子様一人ひとりに合わせた学習・サポートプログラムをご用意しています。

ソウガクでは、発達障害に関する専門機関が授業をサポートし、適正な授業運営と教材の提案提供を行い、究極の個別対応を実施しています。

ソウガクを詳しく知りたい方はこちら
無料体験授業のお申込みはこちら
お電話でのお問い合わせはこちら 0120-907-377 受付時間:10:00~20:00 / 定休日:日祝