発達障害のある中学生の進路と将来｜後悔しない高校選びと将来設計のポイント

発達障害のある中学生にとって、高校選びは人生の中でも特に大きな選択の一つです。
しかし、情報が多すぎて何を基準に選べばよいのか迷ったり、周囲の意見に流されてしまったりすることも少なくありません。

この記事では、発達障害のある中学生とその保護者が後悔しない進路選択をするために必要な知識と、将来を見据えた設計のポイントを詳しく解説します。
進路は「高校に合格すること」がゴールではなく、その先の自立した生活につながる大切な一歩です。
個々の特性や希望に合った選択ができるよう、一緒に考えていきましょう。

中学生の進路と将来を考える前に知っておきたいこと

「進路＝高校選び」だけではない

進路について考えるとき、多くの方が「どの高校に入るか」という視点で考えがちです。
しかし、進路とは本来、もっと広い意味を持つものです。
高校卒業後にどのような進学先を選ぶのか、どのような職業に就きたいのか、さらにはどのような生活を送りたいのかといった、将来全体の見通しを含めて考えることが大切です。

特に発達障害のある中学生の場合、高校での学びや環境が、その後の進学や就職、社会生活に大きく影響します。
そのため、高校選びは「ゴール」ではなく「通過点」として捉え、高校卒業後の姿をイメージしながら選ぶことが重要です。

例えば、将来専門的な技術を身につけたいのであれば、専門学科のある高校を選ぶことが有効かもしれません。
また、自分のペースで学びたいのであれば、通信制や定時制という選択肢も視野に入ります。

高校選びは、あくまでも将来の自立に向けた準備期間をどこで過ごすかを決めることです。
「有名校だから」「友達が行くから」といった理由だけで選ぶのではなく、個々の特性や希望を第一に考えることが、後悔しない選択につながります。

発達障害のある子どもが抱えやすい進路の不安

発達障害のある中学生は、進路選択の場面でさまざまな不安を抱えることがあります。
その背景には、特性による困難や、これまでの学校生活での経験が影響していることが多いです。

まず、自分の特性や得意・不得意が明確に理解できていないことで、「自分に合う高校がわからない」という不安を感じる場合があります。
また、学習面でのつまずきや、友人関係の難しさを経験してきた場合、「高校でもうまくやっていけるのか」という心配を抱くことも少なくありません。

さらに、周囲の生徒が当たり前にできていることが自分にはできないという経験が積み重なると、自己肯定感が低くなり、「自分には進路の選択肢がない」と感じてしまうこともあります。
こうした不安は、本人だけで抱え込まず、保護者や学校の先生、専門家と一緒に整理していくことが大切です。

また、周囲からの期待と自分の希望が一致しないことで、板挟みになってしまうケースもあります。
「親は普通科の高校に行ってほしいと言っているけれど、自分は専門的なことを学びたい」といった葛藤です。
こうした気持ちを言葉にすることが苦手な場合もあるため、保護者側から本人の気持ちを丁寧に聞き取る姿勢が求められます。

保護者と本人で考え方がズレやすいポイント

進路選択では、保護者と本人の考え方にズレが生じやすいものです。
このズレを理解し、すり合わせることが、納得のいく進路選びには欠かせません。

保護者は、子どもの将来を心配するあまり、「できるだけ学力の高い学校に行ってほしい」「安定した進路を選んでほしい」と考えることがあります。
一方、本人は「友達と一緒の学校に行きたい」「自分の興味のあることを学びたい」といった気持ちを優先する場合が多くなります。

また、保護者は長期的な視点で「大学進学」や「就職」を見据えている一方で、本人は「今の自分が楽しく過ごせるか」「毎日通えるか」といった短期的な視点で考えがちです。

この視点の違いは、どちらが正しいというものではなく、両方の視点をバランスよく取り入れることが大切です。

さらに、発達障害の特性によって、本人が自分の苦手なことや配慮が必要なことを正確に把握できていない場合もあります。
例えば、本人は「普通科の高校に行きたい」と言っているけれど、実際には集団での授業についていくことが難しい可能性があるといったケースです。
こうした場合には、保護者や専門家が客観的な視点を提供しながら、本人の気持ちにも寄り添うことが必要です。

大切なのは、一方的に決めるのではなく、本人と保護者が何度も対話を重ね、お互いの考えを理解し合うことです。

高校選びの基礎知識を整理しよう

普通科・専門学科・総合学科の違い

高校にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。

普通科

まず、最も一般的なのが「普通科」です。
普通科では、国語・数学・英語・理科・社会といった基礎的な科目を幅広く学びます。
大学進学を目指す生徒が多く、進路の幅を広げたい場合に適しています。
ただし、授業の進度が速かったり、一斉授業の形式が中心だったりするため、個別の配慮が必要なお子様には負担が大きい場合もあります。

専門学科

「専門学科」は、特定の分野について専門的に学ぶ学科です。
工業科、商業科、農業科、看護科などがあり、将来の職業に直結する知識や技術を身につけることができます。
実習が多く、手を動かして学ぶ機会が豊富なため、座学が苦手な子どもや、興味のある分野がはっきりしている子どもには向いています。
ただし、専門分野が限定されるため、進路変更がしにくい面もあります。

総合学科

「総合学科」は、普通科と専門学科の中間的な位置づけです。
自分の興味や進路に応じて科目を選択できる自由度が高く、幅広い分野を体験しながら進路を決めていくことができます。
自分で時間割を組む必要があるため、計画性や自己管理が求められますが、自分のペースで学びたい子どもには適した環境と言えます。

それぞれの学科には特徴があり、個々の特性や将来の希望に合わせて選ぶことが大切です。

定時制高校と通信制高校の特徴

全日制高校以外にも、定時制高校や通信制高校という選択肢があります。
これらは、発達障害のある中学生にとって有力な進路の一つとなることがあります。

定時制高校

「定時制高校」は、夜間や午前・午後などの時間帯に授業が行われる高校です。
働きながら学ぶ生徒や、さまざまな事情で全日制に通えない生徒が通っています。
少人数での授業が多く、生徒一人ひとりに目が届きやすい環境です。また、学習のペースもゆっくりしていることが多いため、じっくり学びたいお子様に向いています。ただし、通学時間が夜間になる場合は、安全面や生活リズムの調整が必要です。

通信制高校

「通信制高校」は、自宅学習が中心で、スクーリング(登校日)が月に数回程度という形式の高校です。
自分のペースで学習できるため、集団生活が苦手な子どもや、体調に波がある子どもにとっては負担が少ない選択肢です。
近年では、オンラインでの授業や個別指導を取り入れている学校も増えており、学習支援が充実しているところも多くあります。

ただし、通信制高校では自己管理が非常に重要です。
自分で学習計画を立て、課題を進める必要があるため、保護者や家庭教師などのサポートがあると安心です。
また、友人関係を築く機会が限られるため、別の場で社会性を育む工夫も必要になります。

定時制や通信制は「消極的な選択」ではなく、それぞれの子どもに合った学び方を選ぶための前向きな選択肢です。

支援学校高等部の役割と対象

「支援学校高等部」は、障害のある生徒が自立と社会参加に必要な力を身につけるための学校です。
発達障害のある中学生の中には、支援学校高等部への進学が適している場合もあります。

支援学校高等部では、一人ひとりの障害の状態や教育的なニーズに応じた個別の指導計画が立てられます。
学習だけでなく、日常生活のスキルや社会性、職業に関する訓練なども重視されており、卒業後の自立に向けた総合的な支援が受けられます。

対象となるのは、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱などの障害がある生徒ですが、発達障害の場合でも、学習や生活面で大きな困難があり、通常の高校での学びが難しいと判断された場合には進学の対象となることがあります。

支援学校高等部への進学を検討する際には、中学校の特別支援教育担当の先生や、教育委員会と相談しながら、お子様にとって最適な環境を見極めることが大切です。
また、支援学校高等部から大学や専門学校への進学、あるいは就職といった進路も十分に考えられますので、「選択肢が狭まる」と考える必要はありません。

高校選びで見落としやすい「通学」「生活リズム」の視点

高校選びでは、学校の教育内容や進学実績に目が向きがちですが、「通学」と「生活リズム」という視点も非常に重要です。
特に発達障害のある中学生の場合、この点を見落とすと、入学後に大きな負担となることがあります。

通学

まず「通学」についてです。
通学時間が長すぎると、毎日の負担が大きくなり、疲れがたまって学校生活に支障が出ることがあります。
また、満員電車や複雑な乗り換えが苦手な子どももいます。
通学経路は、実際に一緒に歩いてみたり、ラッシュ時の様子を確認したりすることをおすすめします。
自転車通学が可能な距離であれば、それも選択肢に入れると良いでしょう。

生活リズム

次に「生活リズム」です。
全日制の高校は、朝早くから夕方まで授業があるため、規則正しい生活リズムが求められます。
一方、定時制や通信制では、時間の使い方に柔軟性があります。
子どもが朝起きることが苦手だったり、体調に波がある場合には、無理のないリズムで通える学校を選ぶことが継続の鍵となります。

また、高校によっては始業時間が異なることもあります。
例えば、始業が8時30分の学校と9時の学校では、朝の準備時間に30分の差が生まれます。
この小さな違いが、毎日の負担感に大きく影響することもあります。

学校の教育内容や雰囲気だけでなく、子どもが無理なく通い続けられるかという現実的な視点を持つことが、後悔しない高校選びにつながります。

発達障害のある中学生が後悔しない高校選びのコツ

成績や偏差値だけにとらわれない選び方

高校選びでは、つい成績や偏差値を基準に考えてしまいがちです。
しかし、発達障害のある中学生にとっては、偏差値だけで学校を選ぶことが必ずしも良い結果につながるとは限りません。

偏差値の高い学校は、授業の進度が速く、宿題や課題の量も多い傾向があります。
また、生徒の学習意欲が高く、競争的な雰囲気がある場合もあります。
こうした環境が合う子どももいますが、マイペースに学びたい子や、プレッシャーに弱い子にとっては、かえって負担になることがあります。

大切なのは、子どもが安心して学べる環境かどうかです。
例えば、少人数での授業が行われているか、個別の質問や相談がしやすい雰囲気か、配慮が必要な生徒への理解があるかといった点を確認することが重要です。

また、成績が届かないからと諦める必要もありません。
最近では、面接や小論文を重視する入試や、特性に配慮した選抜方法を取り入れている高校も増えています。
それぞれの良さや可能性を評価してくれる学校を探すことが、後悔しない選択につながります。

偏差値はあくまで一つの目安に過ぎません。
子どもの特性や希望、そして高校卒業後の進路を総合的に考えて選ぶことが大切です。

得意・不得意から進路を考える

発達障害のある中学生の多くは、得意なことと不得意なことの差が大きい傾向があります。
この特性を活かして、得意なことを伸ばせる進路を選ぶという考え方も有効です。

例えば、数学や理科が得意で、機械やコンピュータに興味があるお子様であれば、工業科や情報科のある高校を選ぶことで、興味を深めながら専門的な技術を身につけられます。
また、絵を描くことや物を作ることが好きなお子様であれば、美術科やデザイン科といった選択肢もあります。

一方、不得意なことについては、それを無理に克服しようとするよりも、負担を減らせる環境を選ぶことも一つの方法です。
例えば、集団での活動が苦手であれば、少人数制のクラスがある学校や、個別指導が充実している学校を選ぶことで、ストレスを軽減できます。

また、得意なことがまだ見つかっていない場合もあります。
そのような場合には、総合学科のように、さまざまな分野を体験しながら自分の興味を探せる学校が適しているかもしれません。

大切なのは、子どもの特性を「欠点」として捉えるのではなく、「個性」として活かせる環境を探すことです。
得意なことを伸ばすことで自信がつき、不得意なことへの向き合い方も変わってくることがあります。

学校説明会・体験入学で確認すべきポイント

高校選びでは、実際に学校を訪れて雰囲気を確かめることが非常に重要です。
学校説明会や体験入学は、その絶好の機会です。

まず確認したいのは、校舎の雰囲気や設備です。
廊下や教室が整理されているか、静かな環境か、それとも活気がある雰囲気かといった点は、子どもが安心して過ごせるかどうかに影響します。
また、トイレや休憩スペースなど、日常的に使う場所の様子もチェックしておきましょう。

次に、先生や在校生の様子を観察します。
先生が生徒に対してどのような接し方をしているか、生徒同士の関係性はどうかといった点から、学校の雰囲気が見えてきます。
可能であれば、在校生に直接質問してみることもおすすめです。

また、配慮が必要な生徒への対応についても確認しておきたいところです。
例えば、「発達障害のある生徒への支援体制はありますか」「個別の相談はできますか」といった質問を、遠慮せずにしてみましょう。
学校側の回答の内容だけでなく、その態度からも、学校の姿勢が伝わってきます。

体験入学では、実際に授業を受けてみることで、授業のスピードや雰囲気、クラスの人数などが体感できます。
子ども自身が「ここで学びたい」と思えるかどうかは、実際に訪れてみないとわからないものです。

学校案内やウェブサイトの情報だけで判断せず、必ず足を運んで確かめることをおすすめします。

高校生活を見通すチェックリスト

高校選びをする際には、入学後の生活を具体的にイメージすることが大切です。

以下のようなチェックリストを使って、お子様と一緒に確認してみましょう。

学習面

• 授業のスピードについていけそうか
• 宿題や課題の量は無理なくこなせそうか
• わからないことを質問しやすい雰囲気か
• 補習や個別指導などのサポートはあるか

生活面

• 朝の起床時間は無理なく守れそうか
• 通学時間や通学経路に負担はないか
• 給食や弁当など、昼食の準備はできそうか
• 体育や部活動への参加は可能か

人間関係

• クラスの人数や雰囲気は合いそうか
• 友達を作る機会はありそうか
• いじめや孤立への対策はあるか
• 相談できる先生やカウンセラーはいるか

進路・将来

• 卒業後の進路実績はどうか
• 自分の希望する進路につながるか
• 就職支援や進学指導は充実しているか

こうした項目を一つひとつ確認することで、入学後のミスマッチを防ぐことができます。
完璧な学校はありませんが、優先順位をつけて、最も重要な点が満たされている学校を選ぶことが大切です。

高校卒業後を見据えた将来設計

大学・短大・専門学校という進路

高校卒業後の進路として、まず考えられるのが進学です。
大学、短期大学、専門学校にはそれぞれ特徴があり、子どもの希望や特性に応じて選ぶことができます。

大学

「大学」は、幅広い学問を学び、研究を深める場です。
4年間という時間をかけて、専門的な知識や考える力を身につけられます。
発達障害のある学生への支援を行っている大学も増えており、学生相談室や障害学生支援室といった窓口が設置されているところもあります。
ただし、大学は自主性が求められる環境であるため、自己管理や計画性が必要です。

短期大学

「短期大学」は、2年間で実践的な知識や技術を学ぶ場です。
保育、栄養、ビジネスなど、特定の分野に特化したカリキュラムが組まれており、資格取得を目指せるコースも多くあります。
大学に比べて期間が短く、比較的早く社会に出られる点が特徴です。

専門学校

「専門学校」は、職業に直結する技術や知識を学ぶ場です。美容、調理、医療、情報技術、デザインなど、多様な分野があります。
実習が中心で、実際の仕事に近い形で学べるため、手を動かして学ぶことが得意な子どもに向いています。
また、就職率が高い学校も多く、卒業後の進路が明確です。

どの進路を選ぶにしても、高校在学中から情報収集を始め、オープンキャンパスなどに参加して、実際の雰囲気を確かめることが大切です。

就職という選択肢

高校卒業後の進路として、就職を選ぶこともできます。
発達障害のある方にとって、就職は自立への大きな一歩であり、適切なサポートがあれば十分に活躍できる道です。

高校卒業後すぐに就職する場合、学校の就職指導を活用することができます。
多くの高校では、求人票の紹介や面接練習、履歴書の書き方指導などのサポートが受けられます。
特に専門学科や定時制高校では、就職支援が手厚い場合が多くあります。

また、発達障害のある方向けの就労支援機関もあります。
ハローワークには専門の窓口があり、障害者雇用枠での就職を希望する場合には、さまざまな支援を受けることができます。
就労移行支援事業所では、働くために必要なスキルを学んだり、実際の職場で実習をしたりすることも可能です。

就職先を選ぶ際には、仕事内容だけでなく、職場の環境や働き方も重要です。
例えば、ルーティンワークが得意な子どもであれば、手順が決まっている仕事が向いているかもしれません。
また、感覚過敏がある場合には、静かな環境や、一人で集中できる仕事を選ぶことも大切です。

就職は、進学に比べて早く社会に出ることになりますが、働きながら通信制の大学や専門学校で学ぶという選択肢もあります。
一つの道に決めてしまうのではなく、柔軟に考えることが大切です。

通信制高校から大学進学を目指すケース

通信制高校を選んだ場合でも、大学進学を目指すことは十分に可能です。
近年では、通信制高校から大学に進学する生徒が増えており、そのためのサポート体制を整えている学校も多くあります。

通信制高校の利点は、自分のペースで学習できることです。
体調や特性に合わせて学習時間を調整できるため、無理なく勉強を続けられます。
また、高校卒業資格を取得しながら、大学受験に向けた勉強に集中することもできます。

大学進学を目指す場合には、通信制高校の中でも、大学進学コースや特進コースがある学校を選ぶと良いでしょう。また、家庭教師や塾のサポートを併用することで、受験対策をより効果的に進められます。

通信制高校から大学進学を成功させるためには、自己管理が鍵となります。
学習計画を立て、それを実行する力が必要です。
保護者や家庭教師などが一緒に計画を立て、定期的に進捗を確認することで、目標達成の可能性が高まります。

また、通信制高校では、指定校推薦や総合型選抜など、多様な入試方式を活用することもできます。
子どもの強みを活かせる入試方法を選ぶことで、合格の可能性を広げることができます。

将来の「自立」に必要なスキル(学習・生活・社会性)

高校卒業後、さらにはその先の人生を考えたとき、最も大切なのは「自立」です。
自立とは、すべてを一人でできるようになることではなく、必要なときに適切な助けを求めながら、自分らしく生活していく力のことです。

自立には、大きく分けて三つのスキルが必要です。

一つ目は「学習スキル」です。
これは、新しいことを学ぶ力、わからないことを調べる力、計画を立てて実行する力などを指します。
高校や大学、社会に出てからも、常に新しいことを学び続ける必要があります。
そのため、自分に合った学び方を見つけ、学ぶことへの意欲を持ち続けることが大切です。

二つ目は「生活スキル」です。
これは、日常生活を送るための基本的な力です。
例えば、時間を守る、お金を管理する、身の回りの整理整頓をする、健康に気を配るといったことです。
こうしたスキルは、一人暮らしをする際はもちろん、実家で暮らす場合でも必要です。

三つ目は「社会性」です。
これは、他者と関わりながら生活していく力です。
挨拶をする、相手の気持ちを考える、困ったときに助けを求める、感謝を伝えるといったコミュニケーションの基本が含まれます。
また、ルールを守る、約束を守るといった社会のルールを理解することも大切です。

これらのスキルは、一朝一夕に身につくものではありません。
高校生活の中で、少しずつ経験を積み重ねながら育てていくものです。
保護者や学校、支援機関が連携しながら、子どもの成長を見守り、必要なサポートを提供していくことが重要です。

将来設計を考えるときのサポートの活用

学校の先生・進路指導室をどう使うか

高校選びや将来設計を考える際、中学校の先生や進路指導室は非常に重要な情報源です。
しかし、どのように活用すれば良いのか迷う保護者も多いのではないでしょうか。

まず、担任の先生には、子どもの学校での様子や、学習面・生活面での特性について相談することができます。
先生は日々子ども達を見ているため、客観的な視点からアドバイスをもらえることがあります。
また、進路についての悩みや希望を早めに伝えておくことで、適切な情報提供や配慮を受けやすくなります。

進路指導室には、高校の情報が豊富に集まっています。
各高校のパンフレットや、過去の進学実績、受験に関する資料などが揃っており、自由に閲覧できます。
また、進路指導の先生は、多くの生徒の進路選択を見てきた経験があるため、具体的なアドバイスをもらえることもあります。

ただし、学校の先生方は多くの生徒を担当しているため、子どもの特性について十分に理解していない場合もあります。
そのため、保護者から積極的に情報を伝え、必要な配慮や支援について具体的に相談することが大切です。
例えば、「集団での活動が苦手なので、少人数の学校を探している」「通学時間が長いと疲れやすいので、近隣の学校を中心に考えたい」といった具体的な希望を伝えると、より適切な提案が受けられます。

また、三者面談の機会を有効に活用しましょう。
面談前に、聞きたいことや相談したいことをメモにまとめておくと、限られた時間を有効に使えます。

スクールカウンセラー・特別支援コーディネーター

中学校には、進路相談だけでなく、心理面や特性に関する相談ができる専門家がいます。
スクールカウンセラーと特別支援コーディネーターです。

スクールカウンセラー

「スクールカウンセラー」は、心理の専門家で、お子様の不安や悩みを聞いたり、保護者の相談に乗ったりする役割を担っています。
進路選択に関する不安や、高校生活への心配事などを相談することができます。
また、子どもが自分の気持ちをうまく言葉にできない場合、カウンセラーが気持ちの整理を手伝ってくれることもあります。

特別支援コーディネーター

「特別支援コーディネーター」は、発達障害や学習面で配慮が必要な生徒への支援を調整する役割を持つ先生です。
子どもの特性について詳しく相談できるほか、高校への引き継ぎや、入学後に必要な配慮についてのアドバイスももらえます。
また、地域の支援機関についての情報も持っていることが多くあります。

これらの専門家を活用する際には、遠慮せずに相談することが大切です。
「こんなことを聞いても良いのだろうか」と思わずに、気になることは何でも相談してみましょう。
専門家は、保護者やお子様が安心して進路選択ができるようサポートすることが仕事です。

また、相談内容は守秘義務によって守られますので、安心して本音を話すことができます。
定期的に相談の機会を持つことで、進路についての考えが整理され、適切な選択につながります。

家庭教師・塾・支援機関の役割

学校以外にも、家庭教師や塾、民間の支援機関を活用することで、子どもの進路選択をサポートできます。

家庭教師

「家庭教師」は、お子様の特性や学習ペースに合わせた個別指導ができる点が大きな利点です。
発達障害のある生徒の指導経験がある家庭教師であれば、お子様の苦手な部分を理解しながら、学習をサポートしてくれます。
また、進路相談や、高校生活への不安についても、身近な存在として話を聞いてもらえることがあります。

塾

「塾」には、集団指導と個別指導があります。
集団指導は、他の生徒と一緒に学ぶことで刺激を受けられる一方、ペースが合わない場合もあります。
個別指導であれば、お子様のペースに合わせた学習が可能です。
発達障害のある生徒を専門にサポートする塾も増えており、そうした塾では、学習面だけでなく、生活面や社会性についてのサポートも受けられることがあります。

支援機関

「支援機関」には、発達障害者支援センターや、民間の相談機関などがあります。
こうした機関では、進路に関する相談だけでなく、将来の就労に向けた支援や、生活全般に関するアドバイスを受けることができます。
また、同じような悩みを持つ保護者同士が集まる会や、当事者の会などもあり、情報交換や気持ちの共有ができる場となっています。

これらの外部のサポートを活用する際には、子どもに合ったところを選ぶことが大切です。
体験授業や相談会などに参加して、実際の雰囲気を確かめてから決めることをおすすめします。

外部の相談窓口や支援制度

進路選択や将来設計について、公的な相談窓口や支援制度を活用することもできます。

教育委員会

「教育委員会」には、特別支援教育に関する相談窓口があります。
高校への進学に関する制度や、配慮が必要な生徒への支援について、詳しい情報を得ることができます。
また、地域によっては、進路相談会や説明会を開催していることもあります。

発達障害者支援センター

「発達障害者支援センター」は、発達障害のある方とその家族を支援する専門機関です。
進路や就労、生活全般に関する相談ができるほか、必要に応じて医療機関や福祉サービスへのつなぎもしてもらえます。
各都道府県に設置されており、無料で相談できます。

ハローワーク

「ハローワーク」にも、障害のある方の就労を支援する専門の窓口があります。
高校卒業後に就職を考えている場合や、将来の就労について情報を得たい場合に活用できます。

障害者手帳

「障害者手帳」を取得することで、受けられる支援が広がる場合もあります。
手帳の取得については、医療機関や市区町村の障害福祉課で相談できます。
手帳を持つことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、必要な支援を受けるための選択肢の一つとして、情報を集めておくと良いでしょう。

これらの窓口や制度は、困ったときに助けを求める場所として知っておくだけでも、安心につながります。
一人で悩まず、利用できるものは積極的に活用していきましょう。

まとめ

発達障害のある中学生の進路選択は、単なる高校選びではなく、将来の自立に向けた大切な一歩です。
子どもの特性や希望に合った学校を選ぶためには、成績や偏差値だけにとらわれず、学校の雰囲気、通学のしやすさ、サポート体制など、多角的な視点で検討することが重要です。
また、高校卒業後の進路も視野に入れながら、長期的な将来設計を考えることで、より納得のいく選択ができます。

進路選択を成功させるためには、本人の自己理解と、保護者や周囲のサポートの両方が欠かせません。
子どもが自分の得意・不得意を知り、興味や関心を見つけていくプロセスを、保護者は温かく見守りながら支えることが大切です。
学校の先生や専門家、外部の支援機関なども積極的に活用しながら、本人と保護者が一緒に考え、対話を重ねることで、子どもに合った進路が見えてきます。

何より大切なのは、今の選択がすべてを決めるわけではないということです。
進路は一度決めたら変えられないものではなく、途中で軌道修正をすることも可能です。
焦らず、子どものペースに合わせて、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
適切なサポートがあれば、発達障害のある子どもも、自分らしい人生を歩んでいくことができます。
進路選択を通じて、子どもの可能性を信じ、共に未来を描いていってくださいね。